更年期は女性ホルモンの急激な低下によって、体だけでなく、心も不安定になりがち。この時期は更年期の症状の一つとして、憂うつ感や不安感、気分の落ち込みなどがよくみられます。ところが、こうした心の不調を更年期の症状だと思い込んでいると、実は「うつ病」だったというケースも多いようです。そこで今回は、更年期に注意したいうつ病についてお話ししていきます。
更年期は心のトラブルが起こりやすい
更年期は女性ホルモン(エストロゲン)の減少によって、ホルモンバランスや自律神経が乱れるため、心身にさまざまな症状が現れます。
症状は、ホットフラッシュ(ほてりやのぼせ)や発汗、動悸、頭痛、めまい、冷え、だるさ、肩こりといった身体的なものから、イライラ、憂うつ感、気分の落ち込み、不安感、不眠、無気力など精神的なものまで多岐に渡ります。また、症状の重さや現れ方は個人差が大きく、日によって異なる症状が現れたり、症状の重さも変わることもあります。(更年期障害にはどんな症状があるの?代表的な9つの症状を解説)
この時期は、夫や自身の定年、子どもの独立、親の介護など、さまざまな環境の変化や問題が起こります。加えて、老いや病気、経済面の不安といった悩みや負担が重なり、多くのストレスを受けやすい時期でもあります。こうした更年期特有のストレスによって体や心に大きな負担がかかり、うつ病に発展してしまうケースも珍しくないのです。
更年期症状に似ている「仮面うつ病」にも注意
うつ病になると、憂うつ感や気分の落ち込みが続く、物事への興味・関心がなくなる、意欲の低下、注意力や判断力の低下、動作が極端に鈍くなる、悲観的になる、不眠、食欲低下、頭痛などといった症状が出てきます。
また、こうした典型的なうつ病のほかに注意したいのが「仮面うつ病」です。うつ病の場合、憂うつ感など精神症状が最も強く現れるのに対し、「仮面うつ病」は身体症状が前面に現れるのが特徴です。
「仮面うつ病」では肩こりや頭痛、のぼせ、発汗、全身倦怠感、めまい、耳鳴り、動悸、不眠などの症状が現れますが、これらは更年期によくみられる症状でもあります。そのため、更年期症状もしくは何らかの体の病気と間違えやすく、うつ病だと気づきにくいという点で注意が必要なのです。
更年期の不調はうつ病の可能性も視野に
更年期に起こる心身の不調を「更年期だから」といって軽く考えていると、うつ病の治療が遅れてしまうことにもなりかねません。精神症状が強かったり、婦人科で更年期症状の治療をしても改善されない、または検査をしても体に異常がなく、原因が見つからないという場合は、うつ病の可能性も考えられますので、早めに精神科や心療内科に相談してみましょう。
<参考>
池下育子・野末悦子監修『女性の医学百科』主婦の友社、2004年
石河亜紀子ほか監修『からだのことがよくわかる女性の医学』池田書店、2005年
後山尚久「更年期のうつ」『日産婦誌』公益社団法人日本産科婦人科学会、2009年、第61巻 第9号
坪井康次監修『患者のための最新医学 うつ病』高橋書店、2015年
中村理英子『最新版 更年期からのクリニック』主婦と生活社、2004年
厚生労働省 ヘルスケアラボ(http://w-health.jp/)
一般社団法人日本うつ病センター(JDC) UTU-NET(うつネット)「更年期障害はどうしてなるの?どんなからだやこころのケアをすればいいの?」(http://www.utu-net.com/utur/02/01.html)