更年期障害の治療

更年期障害の治療にはどんな方法があるの?

更年期障害は病気ではないものの、日常生活に支障をきたすほどつらい場合は、治療を受けることをおすすめします。更年期障害の治療法は大きく分けて、ホルモン補充療法(HRT)、漢方療法、抗うつ薬・抗不安薬による治療の3つがあります。それぞれどのような特徴があるのでしょうか。ここでは更年期障害の主な3つの治療法について解説します。

更年期障害の3つの治療法

ホルモン補充療法(HRT)

薬_ホルモン補充療法更年期は女性ホルモンであるエストロゲンが急激に減少し、自律神経が乱れることで、心身にさまざまな不調が起こります。このエストロゲンを中心に不足したホルモンを補い、症状を改善していくのがホルモン補充療法(HRT)です。HRTでは子宮の有無などに応じて、エストロゲン(卵胞ホルモン)製剤のみ、もしくはエストロゲン製剤とプロゲステロン(黄体ホルモン)製剤を併用して治療を行います。また、薬の種類には飲み薬、貼り薬、塗り薬があります。

 

HRTは、特に更年期の代表的な症状であるホットフラッシュ(ほてりやのぼせ)や発汗によく効くとされ、そのほかに肩こりやめまい、動悸、イライラや抑うつなどの精神症状、骨粗鬆症、性交痛など、エストロゲンの低下によって更年期以降に起こるさまざまな症状の改善に効果を発揮します。

ただし、HRTを受ける際には注意が必要です。子宮体がんや乳がん、脳卒中、血栓症などにかかっている人は病気を悪化させる恐れがあるため、治療を受けられなかったり、既往歴がある人も避けた方がよいとされています。そのほか、副作用として不正出血などが起こる可能性もあります。治療を受ける際は、HRTのメリットや副作用などのリスクを勘案し、医師とよく相談しましょう。

 

漢方治療

漢方治療漢方では体のバランスが崩れるために、さまざまな症状が起きると考え、そのバランスを整えることで症状の改善を図ります。そのため、複数の症状に悩まされていても、一つの漢方薬で改善してしまうことも少なくありません。(不調は漢方で解消!更年期障害に漢方薬が向いている2つの理由)

また、漢方はその患者の症状や体質などを総合的に判断して、処方する薬を決めるのも大きな特徴です。たとえば、体力がなく、貧血気味で冷えやめまいなどがある人には「当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)」、やや体力が低下した人で肩こりや頭痛、イライラなどがある人は「加味逍遥散(かみしょうようさん)」、体力は中くらいでのぼせやすく、肩こりや頭痛がある人には「桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)」がよく処方されます。

漢方薬は女性ホルモンに直接的に作用しないので、乳がんや子宮体がんの既往があるなど、HRTが使えない場合も服用できるのがメリットです。ただし、漢方薬の服用にも注意が必要です。副作用が少ないといわれる漢方薬ですが、体質に合わなければ副作用が出ることもあるので、体調に異変を感じたら服用を中止し、すぐに医師に相談しましょう。

 

抗うつ薬・抗不安薬などによる治療

薬_抗うつ薬抑うつ気分は更年期の多くの女性に見られる症状ですが、気分の落ち込みや不安感などが強い場合は、抗うつ薬や抗不安薬が用いられます。更年期の時期になって、こうした精神症状がつらい場合は、まず婦人科や受診し、更年期障害かどうかの診断を仰ぎましょう。そのうえで、医師と相談しながら精神科での治療を進めてください。

 

 

 

症状がつらいなら我慢せず治療を

女性医師_治療更年期の症状はいずれ軽くなるものですが、つらい場合は我慢せず、治療を受けるのも手です。早めに治療を受けて快適な生活を取り戻し、更年期を上手に乗り越えていきましょう。

 

 

 

 

 

<参考>
池下育子・野末悦子監修『女性の医学百科』主婦の友社、2004年
石河亜紀子ほか監修『からだのことがよくわかる女性の医学』池田書店、2005年
嶋田豊監修『NHKきょうの健康 漢方薬事典 改訂版』主婦と生活社、2016年
中村理英子『最新版 更年期からのクリニック』主婦と生活社、2004年

大塚製薬 更年期ラボ(http://ko-nenkilab.jp/)
厚生労働省 ヘルスケアラボ(http://w-health.jp/)
武田コンシューマーヘルスケア ルビーナ(http://rubina.jp/index.html)
公益社団法人日本産科婦人科学会(http://www.jsog.or.jp/index.html)
バイエル薬品 更年期のココロエ(http://konenkino-kokoroe.jp/)
久光製薬 エンジョイ エイジング(http://www.hisamitsu.co.jp/hrt/index.html)
持田製薬 ワタシのカラダ相談室(http://www.mochida.co.jp/woman/)

 

不調は漢方で解消!更年期障害に漢方薬が向いている2つの理由

漢方薬による更年期障害の治療効果は現代医療でも広く認められており、いまや漢方は更年期障害の治療法の一つとして一般的なものになっています。では、漢方のどのような点が評価されているのでしょうか。そこで今回は、更年期障害について簡単におさらいしながら、漢方が更年期障害の治療に向いている2つの理由をお話ししていきます。

そもそも更年期障害とは?

体調不良_女性

更年期ごろになると、女性ホルモン(エストロゲン)の減少や自律神経の乱れによって、心身にいろいろな症状が現れます。なかでも、日常生活に支障をきたすほど重い場合を「更年期障害」といいます。

更年期症状は検査をしても体に異常が見当たらず、原因を特定しにくい「不定愁訴」といわれる変調が心身に起こります。
具体的には、ほてりやのぼせ、発汗、動悸、冷え、頭痛、めまい、肩こりといった体の不調もあれば、イライラや不安、不眠といった心の不調もよくみられます。また、症状の現れ方や程度も個人差が大きく、複数の症状が重なったり、日によって異なる症状が出ることもあります。(40歳を過ぎたらそろそろ気になる…… 更年期障害の原因と症状)

 

更年期障害の治療に漢方が向いている理由2つ

漢方薬は現代医療でもその効果が認められ、更年期障害の治療に広く用いられています。その主な理由として次の2つが挙げられます。

不定愁訴の治療に適している

安心_女性

西洋医学の場合、病気の原因にピンポイントで働きかけて治療していくのが特徴です。その分、即効性に優れていますが、原因がはっきりしない不定愁訴のようなケースは対応しにくいことも。
一方、漢方医学において、病気は心身の働きのバランスの乱れによって起こると考えます。漢方薬はそのバランスを整え、自然治癒力を高めることで病気を治療していくので、原因を特定しにくい不定愁訴に対しても改善が期待できるのです。また、さまざまな症状が心身に現れていて、西洋医学では複数の薬が必要なケースでも、漢方だと一つの薬で改善することも少なくありません。

 

 

ホルモン補充療法(HRT)が受けられない人も使える

OK_女性

更年期障害の根本的な治療法として、女性ホルモンを補うホルモン補充療法(HRT)があります。(更年期障害の治療にはどんな方法があるの?)HRTは更年期障害の改善に高い効果が認められていますが、治療を受ける際にはいくつか注意すべき点があります。不正出血などの副作用が起こる可能性があるほか、子宮体がんや乳がん、脳卒中などにかかっている人や既往歴がある人は、病気を悪化させるリスクが高いため、治療を受けられなかったり、注意が必要になります。

漢方薬はHRTのように女性ホルモンに直接作用せず、副作用のリスクも低いため、HRTが受けられない人やHRTを希望しない人でも、服用できる点が漢方薬の大きなメリットです。

 

更年期障害によく使われる3つの漢方薬

漢方薬はその患者の症状とともに体質なども考慮し、同じ症状でもその人に合った薬を処方するのが特徴です。ここでは更年期障害の治療によく用いられる3つの漢方薬をご紹介します。

加味逍遥散(かみしょうようさん)

薬_漢方心身にさまざまな不調が起こる更年期症状に対して総合的に効果が高いとされ、よく処方される漢方薬です。体力があまりない人で、肩こり、めまい、頭痛、のぼせや発汗などのほか、イライラや不安感など精神症状のある方に用いられます。

当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)

体力虚弱で疲れやすく、冷えや貧血、めまいなどがある方に適しています。

桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)

体力は中くらいで、顔はのぼせやすいのに足が冷えたり、頭痛、肩こり、めまいなどがある方に向いています。

服用の際に気をつけたいポイント

薬剤師_注意「副作用が少ない」と思われている漢方薬ですが、体質に合わなければ発疹などの副作用が生じる場合もあります。体に異常を感じたら服用を中止してください。症状の改善がみられない場合も早めに医師に相談し、別の漢方薬に変更するか、ホルモン補充療法(HRT)への変更も検討してみましょう。

 

 

 

<参考>
池下育子・野末悦子監修『女性の医学百科』主婦の友社、2004年
石河亜紀子ほか監修『からだのことがよくわかる女性の医学』池田書店、2005年
嶋田豊監修『NHKきょうの健康 漢方薬事典 改訂版』主婦と生活社、2016年
中村理英子『最新版 更年期からのクリニック』主婦と生活社、2004年

クラシエ 漢方セラピー
(http://www.kracie.co.jp/ph/k-therapy/)
ツムラ 漢方について|悩み別漢方:更年期障害
(http://www.tsumura.co.jp/kampo/nayami/kounenkishougai01.html)
公益社団法人日本産科婦人科学会 病気を知ろう:婦人科の病気「更年期障害」
(http://www.jsog.or.jp/public/knowledge/kounenki.html)